停電を防災訓練に取り入れる意義:実践が命を守る「リアルな防災」へ
災害大国・日本では、地震や台風、大雨などによる停電被害が毎年のように発生しています。
ところが、多くの防災訓練では「避難」や「消火」は行われても、停電への備えは軽視されがちです。
実際には、災害時に最初に止まるのが「電気」であり、そこから混乱が始まります。
この記事では、「停電を防災訓練に取り入れる意義」について、実際の被災事例とともに詳しく解説します。
■ なぜ停電対策を防災訓練に取り入れるべきなのか
1. 停電は災害初期に必ず起こる現象だから
地震・台風・豪雨・落雷など、ほとんどの自然災害で最初に影響を受けるのが「電力供給」です。
照明、通信、冷暖房、医療機器、冷蔵庫など、電気が止まるだけで生活が機能しなくなる現実があります。
→ だからこそ、防災訓練の中で「停電時にどう行動するか」を体験的に学ぶことが不可欠なのです。
■ 停電を防災訓練に組み込む主な意義
① 実際の行動をシミュレーションできる
机上の訓練だけでは、停電時の不便さやリスクを実感することはできません。
ブレーカーを落として「実際に暗闇の中で動く」ことで、初めて見えてくる課題があります。
例:
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懐中電灯の場所が家族で共有されていなかった
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スマホのバッテリーがすぐ切れた
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夜間に階段が危険で移動できなかった
こうした問題を「訓練中に発見」できることが、停電訓練を行う最大の意義です。
② 家族や職場で役割分担を確認できる
停電が起きたとき、誰が何をするかが決まっていないと、パニックが起きます。
防災訓練であらかじめ役割を決めておけば、落ち着いて対応できるようになります。
家庭の例:
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父:ブレーカー確認
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母:非常用ライトとランタン準備
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子ども:高齢の祖父母を誘導
職場の例:
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設備担当:非常電源の起動確認
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総務担当:社員への連絡・避難誘導
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管理職:情報収集・指揮系統の維持
訓練を通して役割を明確にすることで、停電時の初動対応力が格段に高まります。
③ 非常用グッズの実用性をチェックできる
いざという時に「電池が切れていた」「ガスボンベが古くて使えなかった」では意味がありません。
防災訓練に停電を組み込むことで、非常用グッズを実際に動作確認できます。
チェックポイント例:
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ランタンや懐中電灯の光量・バッテリー残量
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モバイルバッテリーやソーラー充電器の性能
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カセットコンロ・簡易トイレ・保冷剤などの使用感
実際に使ってみることで「これは足りない」「これが便利」と気づけます。
④ 心理的パニックの軽減につながる
真っ暗な中で電気がつかないと、人は予想以上に不安や恐怖を感じます。
しかし、一度でも暗闇での行動を経験していれば、次回の停電でも冷静に対処できる心理的耐性が生まれます。
特に子どもや高齢者にとって、暗闇の体験は貴重です。
「停電でも怖くない」「懐中電灯を使えば安心」と理解しておくことで、実際の災害時にパニックを防げます。
⑤ 地域防災力の向上に貢献できる
自治体や町内会単位で停電訓練を実施すると、地域全体の連携が強化されます。
「近所の誰が一人暮らしか」「高齢者宅に非常灯があるか」など、助け合いの仕組みを確認するきっかけになります。
停電を想定した地域訓練では、次のような連携が生まれます。
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家庭ごとの備蓄状況を共有
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灯りの少ない道の安全確認
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近隣住民との声かけ訓練
つまり、停電訓練は「個人の備え」から「地域全体の防災力」へと発展させる鍵なのです。
■ 停電を取り入れた訓練の実例
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自治体主催の夜間停電訓練
→ 町内全体でブレーカーを落とし、懐中電灯で避難経路を確認。結果、街灯のない路地の危険箇所を特定できた。 -
学校の防災授業での停電体験
→ 授業中に照明を消して避難誘導訓練。児童が「光の大切さ」と「落ち着いた行動の必要性」を実感。 -
病院での非常電源シミュレーション
→ 医療機器の電源切替を訓練し、非常用発電機の燃料消費量を把握。災害時の継続稼働時間を改善できた。
■ まとめ:停電訓練は「本当に使える防災訓練」
停電を防災訓練に取り入れることで、
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実践的な行動力がつく
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家族・職場・地域の連携が強化される
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非常用設備の信頼性が高まる
という3つの効果が得られます。
「暗闇の中でどう動くか」を知っている人と知らない人では、
災害時の生存力がまったく違います。
だからこそ、防災訓練には「停電体験」をぜひ加えてください。
それが、命と暮らしを守る最も実践的な防災訓練になるのです。