「上唇小帯」ってなあに?切った方がいいって言われたけど、どうして?優しく解説!
「上唇小帯(じょうしんしょうたい)」という言葉、初めて聞いた方もいらっしゃるかもしれませんね。上唇をそっとめくってみると、上唇の裏側と上の前歯の間の歯ぐきをつないでいる、ぴろんと伸びる小さな「ひだ」があります。これが「上唇小帯」です。
普段はあまり意識することのないこのひだですが、実は、その形や位置によっては、お口の健康や成長に大きな影響を与えることがあるんです。「もしかして、うちの子もそうかも?」「大人だけど気になる…」と感じたあなたのために、上唇小帯がどんな役割をしていて、なぜ切った方がいいと言われることがあるのか、そしてもし治療することになったらどんなことをするのかを、優しく、そして詳しく解説していきますね!
そもそも「上唇小帯」って何?どんな役割があるの?
上唇小帯は、上唇を動かす際に歯ぐきから離れすぎないように、また歯ぐきと上唇を適切な位置に保つための役割を担っています。赤ちゃんがおっぱいを吸うときや、私たちが話したり笑ったりするとき、このひだが上唇の動きをサポートしているんですよ。
通常、上唇小帯は成長とともに位置が高くなり、目立たなくなっていくことが多いです。しかし、中には生まれつき太かったり、歯ぐきのかなり低い位置に付着していたりするケースがあります。この「上唇小帯の付着異常」が、様々なトラブルの原因になることがあるんです。
上唇小帯を切った方がいいと言われるのは、こんな時!
では、具体的にどんな場合に上唇小帯の処置が検討されるのでしょうか?主なケースをいくつかご紹介します。
1. 歯磨きがしづらく、虫歯や歯周病になりやすい時
上唇小帯が太すぎたり、前歯のギリギリの低い位置に付着していたりすると、歯ブラシが小帯に当たってしまい、上の前歯の歯磨きがとてもしづらくなることがあります。特に、歯と歯ぐきの境目や、小帯の周りに食べかすや歯垢(プラーク)が溜まりやすくなり、これが原因で虫歯や歯肉炎、ひいては歯周病のリスクが高まってしまうことがあります。
2. 赤ちゃんの授乳(おっぱいを飲むこと)に影響がある時
乳幼児の場合、上唇小帯が厚く硬いと、赤ちゃんがママのおっぱいや哺乳瓶の乳首にうまく吸い付けないことがあります。唇がしっかり閉じられないと、おっぱいやミルクを飲むのが大変になり、赤ちゃんが疲れてしまったり、十分な量を飲めずに体重が増えにくくなったりするサインが見られることも。もし「うちの子、授乳がうまくいかないな…」と感じたら、小児歯科医に相談してみるのも一つの方法です。
3. 発音に影響が出る可能性が考えられる時
上唇小帯の付着位置によっては、上唇の動きが制限されてしまい、特定の音の発音に影響が出ることがあります。特に「バ行」や「マ行」など、唇をしっかり使う音で発音しにくさを感じることがあるようです。言葉を話し始めるお子さんの場合、滑舌が悪く聞こえる原因の一つになることもあります。
4. 歯と歯の間に隙間ができてしまう「すきっ歯」の原因に!
上の前歯の真ん中に隙間が開いている「正中離開(せいちゅうりかい)」という状態は、上唇小帯の付着異常が原因になっていることがあります。小帯が歯と歯の間に入り込んでいると、永久歯が生え変わっても歯が真ん中に寄らず、隙間が埋まらないままになってしまうのです。この隙間は見た目の問題だけでなく、食べ物が挟まりやすいといった問題も引き起こします。
5. 矯正治療が必要になる場合、または矯正治療をよりスムーズに進めるため
すきっ歯の改善のために矯正治療を行う場合、上唇小帯が原因で歯が動きにくかったり、治療後にまた隙間が戻ってしまったりすることがあります。そのため、矯正治療を始める前や、治療の途中で小帯を切除する処置が勧められることがあります。小帯を切除することで、歯がスムーズに動きやすくなり、治療効果を高めることが期待できるのです。
もし「切った方がいい」と言われたら?「上唇小帯切除術」について
上唇小帯の付着異常が原因で何らかのトラブルが起きている場合や、将来的なリスクを避けるために検討されるのが「上唇小帯切除術」という処置です。聞いただけだと少し怖いと感じるかもしれませんが、比較的簡単な処置で、お子さんの場合でも局所麻酔を使って短時間で行われることが多いです。
どんな方法で切るの?
上唇小帯切除術には、主にいくつかの方法があります。
メスによる切開: 昔から行われている一般的な方法です。局所麻酔をしてからメスで小帯を切除し、その後縫合します。
電気メスによる切除: 電気の熱を利用して小帯を切除します。出血が少ないというメリットがありますが、熱による影響で術後に多少の腫れや痛みが伴うこともあります。
レーザーによる切除: 最近では、レーザーを使って小帯を切除する方法も増えています。レーザーは出血がほとんどなく、傷口の治りも比較的早いです。縫合が不要なケースも多く、患者さんの負担が少ないのが特徴です。
どの方法が適しているかは、小帯の状態やお口全体の状況、そして歯科医院の設備によって異なりますので、担当の歯科医師とよく相談しましょう。
手術の流れと期間は?
一般的な流れとしては、
診察と説明: まず、歯科医師がお口の中を診て、上唇小帯の状態や、なぜ処置が必要なのかを詳しく説明してくれます。
麻酔: 処置する部分に表面麻酔を塗ってから、局所麻酔をします。針を刺すときのチクッとした痛みを和らげるためです。
小帯の切除: 麻酔が効いていることを確認し、選択した方法(メス、電気メス、レーザーなど)で小帯を切除します。
止血と縫合: 出血を止め、必要に応じて切開した部分を数針縫い合わせます。レーザーの場合は縫合しないこともあります。
術後の説明: 処置後の注意点やケアについて説明があります。
処置自体は数分から15分程度で終わることがほとんどです。抜糸が必要な場合は、約1週間後に再度受診します。
処置はいつ頃するのが良い?
上唇小帯切除術を行う時期は、お子さんの成長段階や、小帯の状態によって変わってきます。一般的には、永久歯の前歯が生え始める7歳前後が目安とされることが多いです。この時期に処置することで、前歯の隙間が自然に閉じる可能性が高まります。ただし、乳幼児期に授乳の問題がある場合は、もっと早い時期に処置を検討することもあります。
最終的な判断は、小児歯科医や矯正歯科医が、お子さんの歯や顎の発育状況を考慮して行いますので、気になる方は早めに相談することをおすすめします。
手術後のケアと注意点
上唇小帯切除術は比較的負担の少ない処置ですが、術後のケアも大切です。
当日のうがい: 処置当日は、強くうがいをしないようにしましょう。傷口が開いてしまう可能性がありますので、優しく口をゆすぐ程度にとどめます。
食事: 術後数日間は、熱いもの、辛いもの、硬いものなど、傷口を刺激するような食べ物は避け、柔らかく、刺激の少ない食事を心がけましょう。
痛みと腫れ: 処置後2~3日は、軽度の痛みや腫れが出ることがあります。処方された痛み止めを服用して対処しましょう。もし、痛みが強い場合や腫れが続く場合は、すぐに歯科医院に連絡してください。
歯磨き: 傷口に直接歯ブラシが当たらないように注意しつつ、お口の中は清潔に保つことが大切です。歯科医師から指示があれば、抗菌性のうがい薬を使用することもあります。
多くの場合、1~2週間程度で傷口はきれいに治っていきます。心配なことがあれば、いつでも歯科医院に相談してくださいね。
まとめ
上唇小帯は、普段は意識しない存在かもしれませんが、時に私たちのお口の健康や、お子さんの成長に深く関わっていることがあります。
歯磨きがしにくい
虫歯や歯周病のリスクが高い
赤ちゃんの授乳に影響がある
発音に問題がある
前歯にすきっ歯がある
もしこれらのサインに心当たりがある、または歯科検診で指摘された場合は、一度歯科医院で相談してみることをお勧めします。
「切る」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、上唇小帯切除術は比較的短時間で終わる、負担の少ない処置です。この処置によって、日々の歯磨きがしやすくなったり、きれいな歯並びにつながったり、お子さんの健やかな成長をサポートしたりと、様々なメリットが期待できます。
ご自身の、そしてお子さんのお口の健康を守るために、上唇小帯の小さなサインを見逃さず、必要に応じて専門家のアドバイスを求めることが大切です。今日から、あなたもぜひお口の中の小さなひだに意識を向けてみてくださいね!