「ちゃんと食べてるのに…」高齢者の低栄養、その落とし穴と対策
「食事はしっかり摂っているはずなのに、なんだか体がだるい…」「体重が減ってきた」
こんなお悩み、もしかしたら低栄養が原因かもしれません。
高齢者の低栄養は、「食べる量が少ない」ことだけが原因ではありません。実は、食べている「つもり」でも、必要な栄養が足りていないケースが非常に多いんです。健康に長生きするためには、低栄養の状態をいち早く見つけ、適切な対策を講じることが大切です。
この記事では、高齢者が陥りやすい低栄養の背景から、見逃されがちなサイン、そして今日からできる具体的な対策まで、わかりやすく解説します。あなたや大切なご家族の健康を守るために、ぜひ参考にしてみてください。
隠れ低栄養?「食べているのに」なぜ栄養不足に?
高齢者の低栄養は、食事が十分に摂れていない「質的低栄養」と、カロリーやタンパク質が不足している「量的低栄養」に分けられます。特に注意したいのが、食事はしているものの栄養が偏ってしまう「隠れ低栄養」です。
一体なぜ、そのような状態に陥ってしまうのでしょうか?
1. 食事量の減少と偏り
食欲の低下: 年齢とともに食欲が落ちたり、食べられる量が減ったりすることがあります。
飲み込みにくさ(嚥下機能の低下): 固いものやパサつくものが食べにくくなり、やわらかい麺類やパン、おかゆなどに偏りがちになります。
消化機能の衰え: 胃腸の働きが弱まり、消化しにくい肉類などを避けるようになることがあります。
調理の手間: 身体を動かすのが億劫になったり、家族が少なくなったりすることで、手間のかかる調理を避けるようになり、簡単に食べられるものばかりを選ぶ傾向があります。
買い物や経済的な問題: 重いものを持てなくなったり、経済的な理由から、安価で栄養価の低い食品ばかり選んでしまうケースもあります。
これらの理由から、特にタンパク質やビタミン、ミネラルといった重要な栄養素が不足しやすくなります。
2. 食事内容の偏り
「毎日ごはんを食べているから大丈夫」と思っていても、それが炭水化物中心の食事だったり、野菜ばかりで肉や魚が少なかったりすると、必要な栄養素が摂れません。特に、筋肉の維持に不可欠なタンパク質が不足しがちです。
3. 消化吸収能力の低下
高齢になると、消化吸収能力も若い頃に比べて低下します。そのため、同じ量を食べても、若い頃と同じように栄養が体に取り込まれないことがあります。
見逃さないで!低栄養のサイン
「自分は大丈夫」と思っていても、知らず知らずのうちに低栄養に陥っていることがあります。以下のようなサインが見られたら注意が必要です。
体重の減少: 特に、半年で2〜3kg以上の減少は要注意です。
疲れやすい・だるい: 以前よりも疲れやすくなったり、常に身体がだるく感じたりする。
気力がない・活動量の低下: 何をするにも億劫になり、外出や趣味活動が減る。
風邪をひきやすい・治りにくい: 免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなったり、一度ひいた風邪が長引いたりする。
肌荒れや髪のパサつき: 栄養が行き届かず、肌のツヤがなくなったり、髪が細くなったりする。
傷が治りにくい: タンパク質などの栄養不足で、体の修復能力が低下する。
むくみ: タンパク質不足によって、体内の水分バランスが崩れることがあります。
筋肉量の減少: 身体が細くなった、力が入らないと感じる。転倒のリスクも高まります。
これらのサインは、年のせいだと見過ごされがちですが、低栄養の可能性を示唆している場合があります。
今日からできる!低栄養を防ぐための具体的な対策
低栄養は、日々の食事を少し工夫するだけで改善できる可能性があります。
1. 「タンパク質」をしっかり摂ろう!
筋肉の維持や免疫力アップのために、タンパク質は欠かせません。毎食、意識してタンパク質を含む食品を摂りましょう。
肉・魚: 鶏むね肉、ささみ、白身魚、鮭など、消化しやすく調理しやすいものがおすすめです。ひき肉や缶詰も便利です。
卵: 完全栄養食品とも言われる卵は、手軽にタンパク質が摂れます。ゆで卵、卵焼き、茶碗蒸しなど。
大豆製品: 豆腐、納豆、きなこ、豆乳など。
乳製品: 牛乳、ヨーグルト、チーズなど。
プロテイン: 食事から摂りきれない場合は、プロテイン飲料やゼリーなどを活用するのも良いでしょう。
2. 献立を多様に、色々な食材を摂ろう
炭水化物だけに偏らず、主食・主菜・副菜を揃えることを意識しましょう。
主食: ご飯、パン、麺類(麺は柔らかめに煮るなど工夫)。
主菜: 肉、魚、卵、大豆製品などをメインにした料理。
副菜: 野菜、きのこ、海藻類など。彩り豊かにすることで、様々なビタミンやミネラルが摂れます。
3. 食べやすくする工夫
調理法を工夫: 煮る、蒸す、柔らかく煮込むなど、食べやすい調理法を選びましょう。
小さく切る・刻む: 肉や野菜は小さく切ったり、刻んだりすることで、噛む・飲み込む負担を減らせます。
とろみをつける: 片栗粉などでとろみをつけると、飲み込みやすくなります。
味付けを工夫: 薄味にしすぎず、だしの旨味や香辛料を適度に使うことで、食欲を刺激します。
4. 間食を有効活用する
1回の食事でたくさん食べられない場合は、間食で栄養を補給しましょう。
おにぎり、パン、ヨーグルト、牛乳、チーズ、プリン、カステラなど、手軽に食べられるものがおすすめです。
栄養補助食品(ゼリー飲料やスープなど)を活用するのも良いでしょう。
5. 規則正しい食事時間
毎日決まった時間に食事を摂ることで、生活リズムが整い、食欲も湧きやすくなります。
6. 楽しく食べる環境づくり
誰かと一緒に食事をする、テレビを見ながら食べるなど、楽しく食事ができる環境を作ることも大切です。気分転換にもなり、食欲増進につながります。
まとめ:低栄養は防げる!今日からできる一歩を
高齢者の低栄養は、見過ごされがちですが、適切な対策を講じれば十分に防ぐことができます。
「ちゃんと食べているつもり」でも、本当に必要な栄養が足りているか、今一度ご自身の食生活や体調を見つめ直してみてください。小さな変化に気づき、早めに対策を始めることが、いつまでも元気に自分らしく過ごすための第一歩です。