停電が通信インフラに与える影響とは?ネット・スマホ・企業システムが止まるリスクと対策


突然の停電。
「スマホが繋がらない」「Wi-Fiが落ちた」「会社のサーバーがダウンした」——そんな経験をしたことはありませんか?

私たちの生活やビジネスを支える通信インフラ(ネット回線・携帯基地局・データセンターなど)は、電力供給が止まるだけで大きな影響を受けるシステムです。

この記事では、停電が通信インフラにどんな影響を与えるのか、そして個人や企業が取るべき現実的な対策をわかりやすく解説します。
防災・事業継続(BCP)・テレワーク環境の整備に関心のある方にも役立つ内容です。


■ 停電が通信インフラに与える主な影響

停電の影響は、単に「電気が止まる」だけにとどまりません。
通信設備は電気を使って信号をやり取りするため、一部の停電でも広範囲に通信障害が波及する可能性があります。

1. 携帯基地局の停止

携帯電話の電波を送受信する「基地局」には非常用バッテリーが備わっていますが、
多くの場合は1〜3時間程度しか持続しません
長時間の停電が続くと、次のような事態が発生します。

  • 通話・SMS・データ通信が使えなくなる

  • 緊急通報(110番・119番)がつながりにくくなる

  • 一部地域で「圏外」状態が長時間続く

特に山間部や郊外では、基地局の電源が限られるため、広範囲で通信不能になるリスクが高くなります。


2. 光回線・Wi-Fiルーターの停止

家庭のWi-Fiや光回線も停電に非常に弱い部分です。
停電時に以下の機器が停止します。

  • ONU(光回線終端装置)

  • ルーター・Wi-Fiアクセスポイント

  • パソコン・スマート家電などの端末

これらはすべて電源が必要なため、停電=ネット完全停止を意味します。
特に在宅勤務やオンライン授業では、突然の通信断で仕事・学習が中断されるリスクがあります。


3. データセンター・クラウドサーバーのリスク

大手クラウド(AWS、Google Cloud、Azureなど)は無停電電源装置(UPS)や自家発電を備えています。
しかし、局地的な大規模停電では、次のような問題が発生することもあります。

  • バックアップ発電機の燃料切れ

  • 空調システムの停止によるサーバー過熱

  • 通信回線そのものの遮断(ルート障害)

つまり、「クラウドだから安心」と思っていても、電力インフラと通信網の両方が止まればアクセスできなくなることもあるのです。


4. 企業ネットワーク・VPNの遮断

多くの企業ではリモートアクセスやVPN接続を使っていますが、
社内サーバーやルーターの電源が落ちると、外部からの接続が完全に遮断されます。

特に中小企業では、非常用電源設備を持たないケースが多いため、
停電=業務停止となり、顧客対応・決済・在庫管理に大きな支障をきたします。


■ 実際に起きた事例:停電による通信障害

● 北海道胆振東部地震(2018年)

全域停電(ブラックアウト)により、
携帯電話の通信障害が長時間続き、約290万回線が使用不能に。
自家発電の燃料切れにより、基地局停止が連鎖的に拡大しました。

● 東京23区の一部停電(2022年)

ビルの電源設備トラブルが原因で、一部データセンターが停止。
一時的に大手企業のWebサービスやECサイトがダウンしました。

このように、**停電は単なる電気の問題ではなく「通信停止リスク」**でもあるのです。


■ 個人でできる停電時の通信対策

停電に備えて、個人でもできる実践的な準備を紹介します。

1. モバイルバッテリーを常備

スマホやポケットWi-Fiを維持するために、**大容量バッテリー(10,000mAh以上)**を1つは確保しましょう。
ソーラーパネル付きモデルなら長期停電にも対応できます。

2. 複数回線の確保(デュアルSIM・モバイルルーター)

キャリアや格安SIMを分けることで、片方の通信が止まってももう一方で接続可能になります。
特に災害時は、NTTドコモ系・au系・SoftBank系のどれかが優先される地域もあります。

3. 公共Wi-Fiや衛星通信の把握

一部自治体や企業では、停電時に**災害用Wi-Fi(00000JAPAN)**が無料開放されます。
また、山間部や離島では「Starlink(スターリンク)」のような衛星通信が代替手段になります。

4. 家族や職場との連絡ルールを決めておく

停電中は通信が不安定なため、**「連絡が取れなくても慌てないルール」**を事前に決めておくと安心です。
SNSではなく、SMSや災害用伝言ダイヤル(171)の利用も有効です。


■ 企業・自治体の停電対策ポイント

通信インフラを扱う企業・自治体では、BCP(事業継続計画)の中で以下の対策が重要です。

  1. UPS(無停電電源装置)の設置と定期点検

  2. 自家発電機・燃料備蓄の確保(最低24時間分)

  3. データセンターの二重化・クラウドバックアップ

  4. テレワーク環境の多重回線化(VPN+LTE+衛星)

  5. 定期的な停電訓練・復旧シミュレーションの実施

特にサーバーを自社で運用している中小企業では、UPSやクラウドバックアップが業務停止を防ぐ最も現実的な投資です。


■ まとめ:停電は通信インフラの“見えない弱点”を突く

電気が止まれば、スマホもネットも使えない——。
便利なデジタル社会は、同時に「電力に依存する社会」でもあります。

停電が通信インフラに与える影響を理解し、

  • モバイルバッテリー・複数回線・災害用Wi-Fi

  • UPSや自家発電機の整備

  • 定期的なBCP見直し

これらを実践しておくことで、“通信が命綱”となる時代のリスクを最小化できます。

停電対策=ライフライン対策。
日常の備えが、緊急時に「つながる安心」へとつながります。

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