過去の教訓に学ぶ!台風による大停電の事例と復旧までの流れ、長期化を防ぐ対策
毎年、日本列島に接近・上陸する台風は、私たちの生活基盤である電力インフラに甚大な被害をもたらし、大規模な停電を引き起こします。
「停電が起こると、一体どれくらいで復旧するのだろうか?」「過去の事例ではどんな被害があったのだろうか?」
もしあなたが、台風の接近に備えて、こうした不安を抱いているなら、この記事が役立ちます。
この記事では、特に被害が大きかった過去の大規模停電の事例と、電力会社がどのような手順で復旧作業を進めていくのか、そして私たちが長期化に備えるためにできる具体的な対策を解説します。過去の教訓を学び、来るべき災害への備えを万全にしましょう。
1. 過去の台風による大規模停電の主要な事例
日本で近年、復旧に時間を要した特に大きな台風による停電事例をいくつかご紹介します。これらの事例から、停電が長期化する原因が見えてきます。
事例1:令和元年台風第15号(房総半島台風)
| 発生年 | 令和元年(2019年)9月 |
| 最大停電戸数 | 約93万戸(ピーク時) |
| 主な被災地 | 千葉県全域(特に房総半島) |
| 復旧長期化の原因 | 記録的な暴風により、送電を担う鉄塔が倒壊。また、広範囲で電柱約2,000本が折損し、倒木により山間部の作業道が寸断され、復旧作業員のアクセスが困難になったため。 |
| 復旧期間 | 最長で16日にわたり停電が続いた地域があった。 |
この事例は、送電設備の根幹がダメージを受けたことに加え、倒木という自然災害の副次的被害が復旧を大幅に遅らせた典型的な例です。
事例2:平成30年台風第21号
| 発生年 | 平成30年(2018年)9月 |
| 最大停電戸数 | 約240万戸(ピーク時、関西電力管内) |
| 主な被災地 | 近畿地方(大阪府、和歌山県など) |
| 復旧長期化の原因 | 暴風と高潮により、電柱1,000本以上の倒壊や変電設備の浸水被害が発生。特に被害が集中した地域では、塩害による送電線への影響も広範囲に及び、復旧を困難にしました。 |
| 復旧期間 | 99%復旧までに約5日間を要した。 |
この事例では、短期間で広範囲にわたる甚大な被害が同時に発生したため、復旧に必要な人員や資材の確保が課題となりました。
事例3:令和2年台風第10号
| 発生年 | 令和2年(2020年)9月 |
| 最大停電戸数 | 約53万戸(ピーク時、九州電力管内) |
| 主な被災地 | 九州地方 |
| 復旧長期化の原因 | 暴風雨による電柱の折損や倒木が発生。海岸線から離れた内陸部まで塩害が発生したことも、絶縁体の損傷を招き、復旧作業を複雑化させました。 |
| 復旧期間 | 99%復旧までに約2日間と比較的早期に解消された。(過去の教訓を活かした対応が功を奏した面もある) |
2. 停電発生から復旧までの基本的な流れ
大規模停電が発生した場合、電力会社は人命や社会機能の維持を最優先に、以下の段階的な手順で復旧作業を進めます。
ステップ1:被害状況の把握と初動体制の確立
情報収集: 警報・注意報が出ている段階から体制を強化。台風通過後、直ちにパトロールやドローンなどを用いて、被害のあった電柱の倒壊、電線の断線、送電鉄塔の損傷などの状況を迅速に把握します。
復旧見通しの公表: 初動の情報から、大まかな復旧見通しを公表します。ただし、被害が甚大な場合、この見通しが後に訂正されることがあります。
ステップ2:重要施設と基幹設備の緊急復旧
人命に関わる施設や、広範囲の送電に関わる基幹設備を最優先に復旧します。
重要施設: 病院、警察、消防、給水・浄水施設、通信基地局など、都市機能の維持に不可欠な施設への電力供給を確保します。
基幹送電線: 大規模な変電所や、多数の地域へ電力を送る太い送電線(高圧線)の復旧を急ぎます。
ステップ3:高圧配電線(幹線)の復旧
地域全体の送電網の大元となる高圧配電線を復旧します。
優先順位: 被害状況や停電戸数が多い地域、幹線道路に面した地域など、復旧効果が高いエリアから順次、作業が進められます。
作業の困難さ: 倒木や土砂崩れによる作業道へのアクセス障害が発生した場合、**道路の啓開(道を切り開くこと)**が先に必要となり、作業が大幅に遅れる原因となります。
ステップ4:低圧配電線と引込線の復旧
高圧線から各家庭や事業所に電力を引き込む最後の部分の復旧です。
低圧線・引込線: 高圧線が復旧しても、自宅近くの細い配線(低圧線)や、家と電柱をつなぐ引込線が損傷していると停電は解消されません。
個別対応: この段階になると、各戸ごとの被害に対応する個別作業が増えるため、高圧線復旧後も時間がかかる場合があります。
3. 私たちが今すぐできる「停電長期化」への備え
過去の事例から、停電が2日〜1週間、場合によっては2週間と長期化する可能性があることを想定して備えることが重要です。
| 備えの項目 | 具体的な対策とポイント |
| 電源の確保 | ポータブル電源やモバイルバッテリーは、スマホの充電や小型家電の利用に必須。燃料の備蓄があれば発電機も有効。 |
| 情報収集手段 | 電池式のラジオを必ず用意。停電時でも情報が得られる唯一の手段となります。 |
| 照明 | 懐中電灯、ランタン(LEDが安全)。頭に装着できるヘッドライトは両手が空き非常に便利です。 |
| 食料・水 | 最低3日分(できれば1週間分)の非常食と飲料水。カセットコンロとカセットボンベの備蓄も重要です。 |
| 熱中症・防寒対策 | 季節に応じた対策が必要。夏場は冷却グッズや保冷剤、冬場は防寒着や使い捨てカイロを用意し、命を守る対策を最優先に。 |
停電は単なる不便ではなく、生活そのものを脅かすリスクです。過去の事例を教訓に、「自分と家族の命を守る備え」を万全にして、台風シーズンに臨みましょう。